「ダウの犬」という言葉を知っているでしょうか?
「ダウ」はNYダウ指数を構成する米国を代表する30社を指しています。
「犬」は負け犬という意味です。株価が低迷している下位10社を指します。
つまり「ダウの犬戦略」とはNYダウ構成30銘柄から株価が低迷している下位10社を敢えて買うという戦略になります。
具体的には株価低迷の基準として配当利回りを使い、配当利回りが高い10社に投資します。1年後に変化した配当利回り順位を基に投資銘柄を入れ替えます。これを毎年繰り返す戦略です。
大きく下がった株に投資することでリバウンドを狙うということですね。
過去の株価変動データに照らし合わせると、「ダウの犬」のパフォーマンスはNYダウ指数を上回ることが多いようです。株価の上がり下がりは行き過ぎてしまうことが多いので下がり過ぎた株を買うことが有効な手段になるのでしょう。
ここで注意しないといけないのは、株価が下がった会社がそのまま上場廃止になってしまうことです。NYダウ銘柄のように超大型株だとそんな事態はあまりないかもしれませんが、個別株を買う場合はリスクとして認識するべきです。
そこで私は考えました。
”倒産することが無いインデックスファンド”で「ダウの犬戦略」をやったらどうだろうか?
インデックスファンドは大きく株式、債券、リートの3つに分けられます。さらに地域で分割すると8資産に分類できます。
この8資産は過去のデータを調べると、年度ごとにパフォーマンスが目まぐるしく入れ替わっています。
(出典:日興アセット)
このデータから分かることは、ある資産が別の資産に対して有利であり続けることは無いということです。盛者必衰の理ですね。
投資先として魅力がないと言われている国内株式もつい最近の2015年にトップでした。国内債券は私もあまり興味がないですが、2008年にはトップでした。いずれも過去10年以内に起きていることです。
そこで各資産の年度別リターンデータを使って、前年度の下位パフォーマンス資産に投資した場合のリターンがどうなるかを調べました。
名付けて「インデックスの犬」戦略です。
例として、2009年の下位3つの資産(日本REIT、先進国債券、日本債券)を「インデックスの犬」として2010年の年初に一括投資をします。
この場合、2010年のリターン平均は9.4%になります。8資産に均等投資した場合のリターンは4.56%ですので、「インデックスの犬」の方が良くなりますね。
これを2016年まで繰り返した結果が次の表です。
2010ー2016年の7年間で「インデックスの犬」は8資産均等に5勝2敗の成績を収めています。
「インデックスの犬」が下回った2013,2014年は株式市場が数年に渡って好況な期間でした。こういう投資家にとって幸せな期間はパフォーマンスが抑えられています。
それ以外では「インデックスの犬」の方が良さそうです。
特に過去7年で最悪の年だった2011年は8資産均等が−8.6%の大幅な下落をしていますが、「インデックスの犬」は−1.9%と損失を最小限に抑えています。
7年間の年率リターンのばらつきをBOXプロットで表すと次のようになります。
赤:8資産均等の各年リターン(%)
青:「インデックスの犬」の各年リターン(%)
平均リターンを比べると、8資産均等が10.6%、「インデックスの犬」が11.5%でした。
実際に投資する場合を考えると、単純な平均よりも幾何平均で比べる方が適切です。
幾何平均では8資産均等が9.8%、「インデックスの犬」が11%でした。
では、インデックス投資の雄、先進国株式と比べるとどうでしょうか?
先進国株式の幾何平均は12%でした。(2010−2016年)
「インデックスの犬」よりも1%程度高くなります。さすがですね。
でもこの期間は株式が好調な時期が多かった期間でもあります。
リーマンショックを含む2008ー2016年で比較すると、先進国株式が4.1%、「インデックスの犬」が5.5%でした。
「インデックスの犬」戦略は全天候型の投資法だと言えそうです。
「インデックスの犬」の問題点は売買コストです。毎年大きく資産を入れ替えるので入れ替えコストを考慮する必要があります。
「インデックスの犬」の良いところはどんなに暴落した資産でも個別株のように倒産してしまう心配が無いことです。最もパフォーマンスの悪かった資産に思いっきり比重をかけて投資しても大丈夫です。落ちた資産は必ず戻ります。
ちなみに2017年のパフォーマンスから選択する2018年に投資するべき「インデックスの犬」は、日本REIT、日本債券、先進国債券 の3つです。
2018年は債券中心の保守的なポートフォリオが良いみたいですね。