大手製薬会社エーザイが今週金曜日になんとストップ安まで売られる事態が発生しました。
この日の東証値下がりランキングでも1位となっています。(2位はゼンリン)
怖いのはその夜のADR取引でもさらに下落は進み、日本円に換算すると6140円まで売り込まれたことです。
これは3月20日の終値9065円からみると32%を超える下落になります。
エーザイの株価下落の原因は開発の最終段階まで進んでいたアルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」の開発中止を発表したことに反応したものです。
アルツハイマー病や認知症は先進国を中心に非常にたくさんの患者がいますが、その治療は非常に難しいことが知られています。
これまでも世界中の製薬会社が治療薬の開発を試みてきましたが、臨床試験での有効性を示せずに開発を中止してきた経緯があります。
その中での数少ない成功例はエーザイが開発した「アリセプト」です。
アリセプトは世界中のアルツハイマー病の治療薬として使用され、エーザイの成長を支えてきました。
しかし、アリセプトは特許が切れたことで後発品との競合が発生し、売上が大きく落ち込んでいます。
今回開発が中止された「アデュカヌマブ」は次世代のアルツハイマー治療薬として期待された薬でした。
エーザイの経営にとっても非常に重要な薬だったはずです。
今回の開発中止はエーザイの株価に大きなショックとなりましたが、エーザイのアルツハイマー治療薬はまだ2つ開発中の候補薬が残っています。
「BAN2401」と「エレンベセスタット」です。
この2剤の開発を続けるということはまだ次世代薬の開発に望みがあるということでしょう。
では、下落したエーザイ株をここで買うべきでしょうか?
私は以前、武田薬品株で似たような経験をしたことがあります。
2007年、武田薬品が開発していた高コレステロール血症治療薬の開発中止を受けて株価が急落しました。当時8000円を超える株価だった株が7000円まで下落したのでこれは割安と思って購入してしまいました。
購入してからも株価は下落し、1年半後には買値の半分以下の3300円まで下落してしまいました。
割安と思って購入した株はその後10年以上、1度も買値を上回ることなく昨年12月に手放しています。
エーザイ株がかつての武田薬品株と同じようになるのかは分かりませんが、私はこのときのトラウマがあるので手を出せません。
私はインデックスファンドが急落した場合は積極的に買い向かいたいと思いますが、個別株の急落には慎重な判断が必要だと思っています。